SPCによる不動産証券化の概要

不動産証券化が必要とされる背景

1.早期是正措置と金融機関による不良債権処理策

1998年4月より 早期是正措置が実施され、自己資本比率が基準以下なら金融監督庁の判断により是正措置が取られることとされた。
上記の是正措置の目安は、自己資本比率が国内基準で4%、国際決済銀行(BIS)基準で8%を下回った場合に適用とされた。いわゆる BIS規制である。
とくに、自己資本比率がマイナス(つまり債務超過)の金融機関は、「 業務停止命令」により事実上の解体を迫られる場合もあり得る。
金融機関は不良債権を早期是正措置のガイドラインに沿って「自己査定」し、十分な償却引当により会計処理を行い、自らの経営改善を図った。  ただし、 これは帳簿上の間接償却に過ぎない。
一方、不良債権を直接償却する(これを オフバランスという)手立ての一つとしてSPC(特定目的会社)の活用による「 担保付き債権の証券化」が図られた。

  1. 金融機関は貸付債権(100)を有するが、債務者は実質破綻状態にあり、貸し倒れが懸念されている。
  2. 金融機関は担保不動産の現在価値(30)を背景に、SPCに対して債権譲渡を行い、譲渡代金(25)を回収する。一方、債権との差額(75)については全額損金計上を行う。
  3. SPCに出資した投資家は、最低でも担保不動産の現在価値(30)と出資分(25)との差額(5)を配当金として得られる。

2.資金調達手法の多様化

不動産事業者をはじめ、とくに中小企業に対する金融機関の 貸し渋りが起こり、新規事業に対するこれまでの金融機関からの借入金による資金調達(これを 間接金融という)が困難となった。
そこで、企業は自らの有する資産のうち、キャッシュフローを生み出す資産(不動産、売掛債権など)について、資産担保金融とよばれる資金調達を図った。
「 不動産の証券化」は資産担保金融の一つの手法で、これは不動産の生み出すキャッシューを裏付けとして直接資本市場から資金調達を行う(これを 直接金融という)やり方である。

<間接金融と直接金融のスキーム上の相違(例:オフィスビル取得の場合)>

II.SPC法の解説

1.SPC法成立までの過程

  1. 特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律(SPC法)
    特定資産(※後述)の流動化を行う特定目的会社の組織・業務内容や監督について、資産流動化の促進と投資家保護の観点から定めた法律。
  2. 特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律の施行に伴う関連法律の整備等に関する法律(SPC整備法)
    SPC法に定める資産対応証券(※後述)の金融機関による取扱い、特定目的会社に係る税制上の優遇措置等について定める法律。

上記2法は1998年6月5日成立、同年9月1日より施行され、ここから日本における 不動産証券化の本格的な幕開けとなった。

2.SPC設立の要件

SPC(Special Purpose Companyの略)とは、通常「特定目的会社」と訳される。

(1)特定目的会社

特定資産の流動化のために利用される 特別目的体の一つで、 SPC法を根拠法とする営利社団法人である。
特別目的体は組合、信託、SPCの3形態があり、SPC法施行前までは商法上のSPCが利用された。現在でも、商法上のSPC利用は可能であるが、一般の株式会社と同様の最低資本金・取締役数が必要となるなど設立要件が厳しくなる。 

(2)特定資産の内容

SPC法で流動化の対象となる「特定資産」は次のとおり。

  • 不動産(宅地、建物)
  • 指名金銭債権(貸付債権、リース債権、売掛債権など)
  • 上記1.2.を信託する場合の 信託受益権

特定資産はSPCの定める「資産流動化計画」に基づいて証券化され、当初計画に定めた特定資産は、原則として入れ替えることができない。

(3)SPCの設立要件

SPCが実際の業務を行うにあたっては、 内閣総理大臣の登録を受けなければならない(SPC法3条)。

《登録に必要な書類》

  1. 登録申請書
    商号、資本金額、役員の住所氏名、資産流動化計画など
  2. 添付書類
    定款、資産流動化実施計画、特定資産譲受契約書案など

(4)SPC設立のメリット

SPCは特定資産の流動化のみを目的としており、低コスト化を図るため組織・資本面についての簡素化の措置と、また、税制上の優遇措置も取られている。

《組織・資本面の簡素化措置》

最低資本金300万円(一般の株式会社は1000万円)
取締役は1名以上(同3名以上)

《税制面の優遇措置》

一定の要件を満たしたうえで、 利益の配当の支払額が配当可能所得の90%を超えている場合は、 法人税は非課税扱いとなる。
登録免許税(SPCへの所有権移転時) 2.5%(通常の場合は5.0%)
不動産取得税2.0% (通常の場合は4.0%)

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